家電の人〜母を想うその2

日常生活の中でふとした時に母を思い出しては泣いていた昨年。

空気がその頃のようにしーんと静かにしている日は「思い出したこと」と同時に「思い出した想い出」がついてきて、それを俯瞰しているわたしがいます。

その隣に母がいたら「あのとき毎日泣いてたねー」って懐かし話にできそうな、そんなことを頭の中で思いながら...ゆっくりと時を感じて。


そんな中でふと昔のことを思い出して、母に伝えられたらいいのになぁと想うことを綴ってみます。

母は「家電の人」でした。

新しい家電大好きで、なぜかめちゃくちゃ情報が早くて(笑)いつも家電に関しては教えられることばかりでした。

わたしにエレクトーンという電子楽器を与えたのも母です。

「ピアノはみんな弾いてつまらないやん。新しいものって楽しいやん♪」とまぁ、そんなひとことでエレクトーンを習わせてもらえたのはわたしの財産の一つだなぁと思います。


そんなこんなである日、母は電子レンジとハンドミキサーを買って帰ってきました。

「スポンジケーキを焼いてみようと思って♪」

当時まだ電子レンジもハンドミキサーもわたしの住んでいた田舎では「なにそれ?」ってものだったと思います。

上の写真、今もわたしが現役で使っているその当時のハンドミキサー。

調べてみたら1986年あたりの製造のもののようです。


本を見ながら一生懸命やってみていた母の姿、覚えています。

はじめて焼いたスポンジケーキが膨らまずにしょぼんとしていた姿も。

めげずに何度か焼いていた気がします。

できたスポンジも味見したし、デコレーションも一緒にしました。


「わたし、お菓子作りに向いてないんやわ」とある日やめてしまったけど、今ならわかることがあります。

お母さん、あれはね、お母さんの作り方のせいじゃなくて...電子レンジのオーブン機能のせいだよ!!

だって、わたし、お母さんの残してくれたハンドミキサーで作ったシフォンケーキがこんなに膨らむのだもの。

あの日、一緒にスポンジの作り方を見ていたけど、メレンゲの作り方だって失敗してなかった。

ただ電子レンジの余熱やオーブン機能が当時のものでは不十分だっただけ。

お母さんがあの頃、スポンジケーキをうまく焼けていたら...このハンドミキサーはわたしの元へこなかったかもしれないね。

今もまったく支障なく使えているハンドミキサー。さすがMade in Japan。

壊れるまでわたしは使うつもりです。

シフォンケーキなんてうまく焼けるわけないよって思っていたけど、作るのが楽しくていろんな方へおすそわけできていて、自分も食べるのが好きで。

お母さんに食べてもらうことはできなかったけど、作っているときに「一生懸命スポンジケーキを作っていたお母さんの姿」を思い出すとなんだか、自分の中で引き継がれたものを感じられるのです。


もう家電のことを教えてくれる母はいないけど、わたしの中ではずっと「家電の人」

残してくれた家電、大切に使うね、お母さん。